2020/10/04
【概観】
いよいよアメリカの大統領選挙も投票日まで、残るところあと1ヵ月ほどとなった。9月29日には、中西部オハイオ州で90分にわたる第1回テレビ討論会が行われ、現職大統領で共和党大統領候補ドナルド・トランプと、前副大統領で民主党の大統領候補ジョー・バイデンの両者が激しく衝突した。このテレビ討論会は、両者が相手の話を遮って非難や中傷を繰り返すなど、大統領となる人物とは思えない品格の欠如が批判されて、ABCテレビは「これまでで最もひどい討論会だった」と論評し、またFOXニュースも「疲れるけなしあいだった」と批判した。多くの世論調査機関が、この第1回討論会の勝者がバイデン候補だとする調査結果を示したが、他方でときおり懸念されていた短気で感情的な反発が示されたりしたことからも、バイデン候補に対する批判も多く見られる。
2020年の大統領選挙は、コロナ禍によるアメリカの社会や経済の混乱という異常な状況の中で行われている。そのようななかで、10月2日未明、トランプ大統領は自分と妻が新型コロナウイルスに感染したとツイッターで発表した。このことは世界を驚愕させた。大統領選挙も終盤となり、不利な情勢下で選挙活動再開が不可欠と考えたトランプ大統領は、3日間の入院後に退院して、周囲への感染を避けるために必要な十分な隔離期間を置かずに公衆にその姿を見せることになった。このトランプ大統領の新型コロナの感染と入院が、大統領選挙でどのような影響を及ぼすか、まだ不明である。他方で世論調査では、バイデン候補のリードが広がったとするものが多く見られる。
この一ヵ月の論壇の一つの傾向として、大統領選挙終結後もしばらくは混乱が続くだろうという見通しが見られることであり、これはこれまでとは大きく異なる状況といえるだろう。また、アメリカの民主主義、さらにはアメリカの世界的な指導力と信頼感が大きく損なわれていることを懸念する見解も多く見られる。大統領選挙の勝者がどちらになるかで、アメリカも世界も、大きく異なる帰結を見せることであろう。他方で、どちらが大統領になっても、アメリカ社会の分断が進み、アメリカの民主主義が大きな傷を負うことも明らかだ。
以下、そのような観点から、この一ヵ月間の論壇の動きを回顧したい。(続きを読む)
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