2021/02/03
【概観】
アメリカでバイデン政権が成立したことで、国際情勢の歯車が音を立てて回転しはじめた。中国、日本、ロシア、EU諸国など、多くの国々の政府が、バイデン新政権とどのような関係を構築するかを摸索して、関係改善の方途を検討している。他方で、米中対立はしばらく続く見通しであり、それが今後の国際政治の構造を規定していくだろう。
そのようななかで、世界がもっとも注目していたのが、はたしてバイデン政権が成立したことによって、どの程度アメリカの対外政策、とりわけ対中政策が変化を見せることになるか、ということであった。政策の継続性と変化と、その二つの間のバランスが、これからどちらに傾くかは、今後の政権の政治任用人事や、新しい戦略の策定によって規定されていくのだろう。
他方で、台湾情勢をめぐり中国がよりいっそう圧力を増していく中で、それを契機として軍事衝突が勃発する可能性が懸念されている。とりわけ、中国における2月1日の海警法の改正によって、よりいっそう海警が中国の人民解放軍と統合されることになり、さらにはよりいっそう武器の使用が容易になる。そのことは、周辺国、さらにはこの地域で「航行自由作戦」を展開してきたアメリカにとって、深刻な不安をもたらしている。台湾防衛をめぐり、アメリカがどの程度コミットメントをするかということが、米中間での対立の争点となっている。
また、今年1月6日の連邦議会乱入事件を受けて、アメリカのデモクラシーをめぐり多様な議論が噴出している。とりわけ、アメリカ国内でトランプ前大統領がこれまで繰り返し大統領選挙で「不正が行われた」と、明確な根拠なくいい続けたことで、アメリカのデモクラシーに対する信頼が大きく低下した。アメリカが国際社会でリーダーシップを発揮するためには、世界の多くの諸国が共感する魅力的な理念を擁護することが重要であろう。そのように考えると、ミャンマーでクーデターが勃発し、アウンサンスーチー国家最高顧問が統治する民主主義政府の権力喪失に対して、バイデン政権がどのように対応するかが、バイデン外交の今後を占う重要な事例となるのではないか。(続きを読む)
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