2021/03/03
【概観】
2021年1月20日にバイデン政権が成立してから、アメリカ政府はトランプ前政権と大きく変わらぬ対中強硬路線を示している。またそれと関連してバイデン政権が同盟国との関係改善に尽力していることは、日本にとって歓迎すべきことであろう。他方で、バイデン政権が対中批判一色なわけではなく、政策領域ごとに協力を摸索する姿勢であり、また国内問題を優先するであろうことから、どの程度の資源を対中政策に割くことができるのかは不透明である。
そのようななかで、台湾問題や尖閣諸島問題に対して、中国政府はより積極的で強硬な姿勢を示すようになり、軍事衝突も辞さない態度を繰り返し見せている。それゆえ、東アジア地域の安全保障の専門家たちの一部は、米中軍事衝突の可能性を深刻に懸念する論考を寄せている。そのような有事の際に、日本がどのような行動をとることができるのか、そしてどのような行動をとるべきなのか、われわれもまた最悪の事態を想定することも必要であろう。
それと関連して、バイデン政権の外交がこれまでの路線から訣別して大きく異なる斬新な政策を示すべきなのか、あるいはトランプ政権の対中政策を継承して超党派的な合意を摸索すべきかについて、アメリカ国内でも見解の対立が見られる。それはまた、どの程度アメリカが外交に資源を用いるべきか、そしてどの程度実際に対中協調が可能なのかによって、主張が大きく異なってくるのであろう。
コロナ禍でアメリカ国内において、世界で最大の感染者数と死者数を出していることが、中国とロシアの対外行動を積極化させているともいえそうである。アメリカの指導力が不在であった際の「力の真空」を、中露両国が埋めようとしているのかも知れない。それに対して、バイデン新大統領は、「アメリカは戻ってきた(America is back)」という言葉を繰り返し語り、アメリカが再び世界政治で指導的な役割を果たすことを約束する。はたして、それがどの程度実現可能なのか、そしてそのためにどの程度の資源を割くべきか。しばらく注意深くその動向を観察する必要がある。(続きを読む)
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