2021/05/20
【概観】
4月16日にワシントンDCで行われた日米首脳会談は、よりいっそう深刻化した米中対立と、大陸からの軍事的圧力の増す台湾の安全保障問題を背景として、画期的ないくつかの成果を含む日米首脳共同声明と、二つの別添文書に帰結した。これはまた、インド太平洋地域において日米同盟がその中核に位置することを示すものでもあった。
そのような成功には、いくつかの理由がある。まず、バイデン新政権が、それまで日本が促進してきた「自由で開かれたインド太平洋」構想への力強い支持を行ったことによって、両者が同じ目的を共有するようになったことは大きな意義がある。だがそれ以上に重要なのは、おそらく日米首脳会談での第2の別添文書、すなわち「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」で示されているような、日本や他の同盟諸国およびパートナー諸国との提携を通じて、アメリカの技術力、競争力を回復することが目指されていることであろう。アメリカは、米中対立における重要な領域として先端技術をめぐる競争を意識して、アメリカのこの分野の競争力回復が国内経済的にも、また国際社会における米中対立における優位性を確立するためにも、不可欠であると考えているのであろう。
このような、日米首脳会談の成功と、とりわけ台湾問題をめぐる米中対立の熾烈化は連動している。というのも、今回の日米首脳会談の共同声明で、「台湾海峡の平和と安全」という文言が含まれているからである。はたして、日本は日米同盟を強化することによって、中国との対立の側面が増していき、経済的なデカップリングも進むのであろうか。あるいは、中国との良好な経済関係を維持したまま、安全保障の領域でアメリカとの一体化を進めることは可能なのだろうか。これらの問題をめぐり、この一ヵ月の間に見られた国際論壇における主要な論考を、以下で見ていくことにしたい。(続きを読む)
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