2009/11/11
細谷雄一著(慶應義塾大学出版会, 2009年)
はたして、倫理的な戦争などというものが、あるのだろうか。あるいは、「善」なる目的を掲げ、戦争によって「正義」を実現することは可能だろうか。国家主権の境界線を越えて、人権の問題、道徳の問題、倫理の問題を問うことは可能であろうか。
イギリスのブレア首相は大きな国際的秩序の構想を掲げて米欧の間をつなごうと試みたが、イラク戦争をめぐって自らの構想と戦略において大きく躓き、自らの政治的名声を損ねることになった。
ブレアが苦悩し、真剣に直視したこれらの難しい問題こそ、21世紀の国際政治を考える上で中心的な課題であり、本書では、ブレアが外交を指導したこの十年間を振り返って、その意味を再検討する。
多くの公開資料をふまえた外交史家の広い視野からの考察と、いきいきとした筆致が最後まで一気に読ませる、渾身の大著。
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